2021年5月4日火曜日

低速度侵徹の侵徹深さの求め方 - Forrestalの式 -

 前記事までで、$\sigma_{rr}$の具体的な形を求めることが出来ましたので、最後に侵徹体軸方向に生じる力を求めましょう。

計算ノートはgithubに置いています。

以下の図に今回用いる関係を示します。

まず、応力$\sigma$と力$F$の間には面積$S$を用いて$\sigma =FS$の関係があるので、角度$\theta$での面積を求める必要があります。

とはいえ、似たようなことは$k$の計算でもやっています。

角度$\theta$における球の表面積$dS$は$dS = 2\pi rdL$ですが、$r,dL$はそれぞれ

$$ r = s\sin{\theta}-\left(s-a\right)$$

$$ dL = sd\theta $$

ですから、 

$$dS = 2\pi s\left(s\sin{\theta}-\left(s-a\right)\right) d\theta$$ 

となります。よって、角度$\theta$での$dFz$は

$$dF_z = \sigma_{rr}^z dS = 2\pi \sigma_{rr}s^2\left(\sin{\theta}\cos{\theta} -\left(\frac{s-a}{s}\right)\cos{\theta} \right) d\theta$$

となります。ここで、$\sigma_{rr}$の$z$方向成分$\sigma_{rr}^z$は$\sigma_{rr}\cos{\theta}$であることを用いています。

また、$\sigma_{rr}$は$V_z,\theta$の関数$\sigma_{rr}\left(V_z, \theta\right)$です。

あとは上式を$\theta: \theta_0 \rightarrow \pi/2$まで積分して終わりです。ここで、$\theta_0$は$\sin^{-1}\left(\frac{2\psi-1}{2\psi}\right)$です。

ここでは、$\sigma_{rr}(a)$を

$$ \sigma_{rr}(a) =\frac{2Y}{3}\left[ 1+\ln{\frac{2E}{3Y}}\right] + \rho_t\left(\frac{3(V_z\cos{\theta})^2}{2}\right) $$

として、動的Cavity expansion analysisの解について解いてみましょう。

定義に代入して、適当に積分すれば

$$ F_{z} = \pi a^{2} \left(\frac{V_{z}^{2} \rho_{t} \left(8 \psi - 1\right)}{16 \psi^{2}} + \frac{2 Y \left(\log{\left(\frac{2 E}{3 Y} \right)} + 1\right)}{3}\right)$$

として、$F_z$を得ます。ここで、

$$ \frac{1}{16} = \frac{3}{2}\times \frac{1}{24}$$

$$ N = \frac{8\psi-1}{24\psi^2}$$

として、上式を置換することで、

$$F_z = \pi a^2\left[ \frac{2Y}{3}\left(1+\ln{\left(\frac{2E}{3Y}\right)}  \right)+ \frac{3}{2}N\rho_t V_z^2 \right]$$

として簡単な形で$F_z$が得られます。上式は動的Cavity expansion analysisについての結果ですが、静的Cavity expansion analysisの結果は第一項のみを持ってきて、

$$F_z = \pi a^2\left[ \frac{2Y}{3}\left(1+\ln{\left(\frac{2E}{3Y}\right)}  \right) \right]$$

として得られます。

これで、侵徹体に掛かる力$F_z$と質量$m$を導くことができましたので、侵徹体に関する運動方程式を
$$ m\dot{V}_z = -F_z $$
としておくことが出来るようになりました。ここで、$\dot{V}_z$は$V_z$の時間微分で、侵徹体の加速度です。
今、$m$は
$$ m= \pi \rho_p a^2\left(L+ka\right)$$
としてわかっているので、
$$-\rho_p \left(L+ka\right)\dot{V_z} =  \frac{2Y}{3}\left(1+\ln{\left(\frac{2E}{3Y}\right)}  \right)+ \frac{3}{2}N\rho_t V_z^2 = \sigma_s + \frac{3}{2}N\rho_t V_z^2  $$
と具体的な形がわかります。
このような、
$$ a \dot{V}_z = b +c V_z^2 $$
の積分は、
$$ a\frac{dV_z}{dt} = a \frac{dz}{dt}\frac{dV_z}{dz} = aV_z\frac{dV_z}{dz} = b+cV_z^2$$
$$ dz = \frac{aV_z}{b+cV_z^2} dV_z$$
$$z: 0 \rightarrow P$$
$$ V_z : V_0 \rightarrow 0$$
となり、また、$f=b+cV_z^2$とおけば、分子の$aV_z$は$\frac{a}{2c}f^{\prime}$であるので、
$$ \int_{V_0}^0 \frac{f^{\prime}}{f} dV= \ln{f(V_0)/f(0)}$$
から、
$$ P = \frac{a}{2c}\ln{\left(1+\frac{cV_0^2}{b}\right)}$$
として、求められます。$a,b,c$に代入すれば、
$$P = \rho_p \frac{L+ka}{3N\rho_t}\ln{\left(1+ \frac{3N\rho_t}{2\sigma_s}V_0^2 \right)} $$
となり、これが動的Cavity expansion analysisから求められる侵徹深さであり、Forrestalの式と呼ばれるものです。
また、静的Cavity expansion analysisの結果からは、
$$P = \rho_p \frac{L+ka}{2\sigma_s}V_z^2 $$
が得られます。

以上が低速度で最も基本的な解析モデルです。

この辺の計算は今回全部sympyで計算してやったんですが、積分もきれいにしてくれて滅茶苦茶便利ですね。
去年くらいに必死に手で導出した苦労は一体...(大切ですが

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