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2021年5月1日土曜日

侵徹体の形状から侵徹体の重量を求める

 本記事では典型的な侵徹体の質量を、その形状因子のみから計算することを目的とします。質量は体積が明らかであれば密度を掛ければ算出できるので、ここでは特に体積の導出方法について検討します。(逆に形状と質量があれば平均的な密度を求めることが出来ます。


今回はsympyで展開したので、興味がある方はこちらをご覧ください。


侵徹体の形状は様々なものがありますが、ここでは以下のように、半径a、長さLの円柱部に半径sの円を侵徹体軸上で回転させた先端部を貼り付けた侵徹体を考えましょう。この侵徹体形状は低速度侵徹を解析的に解くことが可能な形状であり、侵徹の試験において多く用いられています。




このような侵徹体の先端形状を定義する際に、CRH(Calibre-Head radius)と呼ばれる以下の指標を用います。

\psi = \frac{s}{2a}

この指標を用いることで、侵徹を簡潔に表すことができます。(その辺の詳細はまた後日

本項の目標は、上述の特徴を有する侵徹体の体積V

V = \pi a^2 (L+ka)

のように、円柱部の断面積を用いて簡潔に表現することです。このkを求めてみましょう。


今、上の図には、\theta_0, lが定義されていますが、その具体的な形はわかっていません。まず、図から明らかに、

\sin{\theta_0} = \frac{s-a}{s} = \frac{2\psi-1}{2\psi}

なので、\theta_0\sin^{-1}{\frac{2\psi-1}{2\psi}}であることがわかります。また、lは明らかにs\cos{\theta_0}ですが、

\cos{\theta_0} = \sqrt{1-\sin^2{\theta_0}}=\sqrt{\frac{4\psi^2-(4\psi^2-4\psi+1)}{4\psi^2}}=\frac{\sqrt{4\psi-1}}{2\psi}

であること、また、s=2\psi aであることから、

l=a\sqrt{4\psi-1}

であることがわかります。


では、侵徹体先端部の重さ(=体積)を求めましょう。

侵徹体軸上に、\theta_0 \rightarrow \pi/2の範囲で存在する半径sの円の体積を求めるためには、

y = s \sin{(\theta)} - (s-a)

x = s \cos{(\theta)}

V_o = \int_{0}^{l} \pi y^2 dx

を解けばいいわけですが、x\thetaの関数なので、\thetaについての導関数を求めて置換すると、

dx=-s\sin(\theta) d\theta

l:\ 0 \rightarrow l

\theta:\ \pi/2 \rightarrow \theta_0

から、

V_o = \int_{\pi/2}^{\theta_0} -\pi s\sin(\theta)  y^2 d\theta

となり、これを積分して気合いで整理すると、

V_o = \pi a^{3} \left(- 8 \psi^{3} \operatorname{asin}{\left(\frac{\sqrt{4 \psi - 1}}{2 \psi} \right)} + 4 \psi^{2} \operatorname{asin}{\left(\frac{\sqrt{4 \psi - 1}}{2 \psi} \right)} + \sqrt{4 \psi - 1} \left(- 4 \psi^{2} + \frac{4 \psi}{3} - \frac{1}{3}\right)\right)


となります。ここまでくれば、

V = \pi a^2 (L+ka)

と式の形を合わせるように、k

k = \left(- 4 \psi^{2} \left(2 \psi - 1\right) \operatorname{asin}{\left(\frac{\sqrt{4 \psi - 1}}{2 \psi} \right)} + \sqrt{4 \psi - 1} \left(- 4 \psi^{2} + \frac{4 \psi}{3} - \frac{1}{3}\right)\right)

と定めれば、当初欲しかったkが得られます。

後はVに侵徹体の材料の密度\rhoを掛ければ、侵徹体の重量がわかりますし、逆に重量がわかっていれば、侵徹体の平均的な密度がわかります。

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