続・海軍製鋼技術物語を読んでてふと疑問に思ったことを今回は。
解決はしません。
知っての通り、日本で最も有名な戦艦である大和及び武蔵の二隻は世界最大の戦艦であります。
大和型は優れた防御力を有していましたが、その理由の一つとして最大410mm厚の舷側装甲板ですとか560mm厚の主砲防盾部、200mm厚のMo添加NiCr鋼製の水平甲板などが挙げられます。その設計とかその実際などは種々議論がなされているかと思いますが、個人的な興味は当時の特殊鋼製鋼にありますのでそこには触れません、というかほんとにわからないので触れられません。一方で、材料的な視点から見た資料はそれほど多くないように思います。いや、単純に調査不足と言われますと全くその通りです。
大和型の装甲で最も板厚を要求される部位には、イギリスのヴィッカース社より技術導入をしたヴィッカース鋼板の組成で浸炭を省略したVH鋼板と呼ばれるものが用いられています。具体的な組成はさておくとして、0.4C-4Ni-2Cr鋼と考えていて概ね良いかと思います。
この鋼板の製造プロセスあるいは、呉海軍工廠製鋼部の設備について詳しく書かれた本として海軍製鋼技術物語、続・海軍製鋼技術物語があります。筆者は戦中に東大冶金学科を卒業した後呉海軍工廠製鋼部で勤務し、戦後は日本鋼管(現JFE)取締役だった方で、1991年に日本鉄鋼協会で取りまとめられた「戦前軍用特殊鋼技術の導入と開発 : 旧陸海軍鉄鋼技術調査委員会報告書」の座長をされていました。
そういうわけで続・海軍製鋼技術物語は大変勉強になっているんですが、それを読んでいてVH鋼板のプロセスで疑問に思ったことがありました。
まず念の為に鉄-炭素平衡状態図を以下に示します。
JFE21世紀財団のものを使用させていただきました。
横軸は炭素の重量分率であり、縦軸は温度です。
ここで触れたいこととして、鉄は低温ではα相、高温ではγ相になり、それぞれ以下に示す結晶構造(BCC,FCC)を有します。δ相はα相と同様の結晶構造を有しますが、ここでは無視します。また、θ相はFe3Cという組成を持つ炭化物です。この状態図は各温度で保持した時の最も安定な相の構成を示しており、
1.炭素量が増えるとともにγ相単相の領域が低温側に拡大し、
2.炭素が添加されると低温でα相及びθ相の二相からなる領域ができる
ということがわかります。温度変化に伴うγ→α+θのような相の変化を変態と呼びます。
平衡状態図はあくまでもある温度で保持した時のものであり、冷却速度は考慮されていません。冷却速度が考慮されたものとして連続冷却変態線図(CCT)が、あるいはある温度の浴で焼き入れた後変態挙動を調べた等温変態曲線(TTT)があり、模式図を以下に示します。
横軸時間で縦軸温度です。
これはTTTに無理やり冷却を書きこんだものですが、図にかかれているように、α+θの変態が開始するよりもはやくγ単領域からマルテンサイト領域まで冷却することができれば、マルテンサイト単相を得ることが出来、この急冷処理は広く焼入れと呼ばれることは承知のとおりです。
さて、鉄炭素系のマルテンサイトはFCCの八面体位置に侵入した炭素によりマルテンサイト格子は伸長し、マルテンサイト組織には大量の格子欠陥が導入されるため高い降伏強度を有します。個人的な雑感なんですけど、マルテンサイトが出ると硬くなるという説明をするのとは逆に超弾性とか形状記憶合金とかのマルテンサイト変態が話される文脈をあんまり見ないんですけどどうなんでしょうね。同じ鉄のマルテンサイトでも加工性を高めるために使われるマルエージング鋼さんかわいそう。
とはいえ、大量の格子欠陥と格子ひずみを持つ鉄炭素系マルテンサイトはそのままでは伸び、靭性にすぐれないためにもう一段階処理されるのが普通です。次の処理は、温度をγ単相領域ではなく、α+θ領域(あるいはα+炭化物領域)で保持することにより、マルテンサイト中の過飽和な炭素が炭化物として析出し、強度-伸びのバランスに優れた高張力鋼を得ることが出来ます。この処理は焼き入れたものを再び戻すので焼戻しと呼ばれます。このような焼入れ焼戻し処理の温度プロファイルの典型例を以下に示し、今後これを用いた表示を用います。
さて、このような焼入れ焼戻し処理によって得られたα+θから構成される鋼と、γ単相領域から徐冷されることで得られるα+θから構成される鋼とでは、同じ構成相であるにも関わらず異なる強度、伸びを示すことが知られています。これは、焼入れ焼戻し処理によって得られたα+θから構成される鋼が以下の模式図のようにθ相がα相中に分散しているのに対して除冷によって得られた鋼は模式図(b)に示すような、α相とα相とθ相が層状になった粒を含むためです。
このような顕微鏡によって見られる相の分散状態などをざっくりとまとめる言葉として組織、あるいは微細組織という単語が用いられます。
つまり、同じα+θという構成相であるにも関わらず、焼入れ焼戻しされた鋼と徐冷された鋼の機械的特性が異なるのは、組織が違うため、あるいは微細組織が焼戻しマルテンサイト組織とパーライト組織と異なるためという事ができます。
前説が長くなりましたが、ここからが本題です。
海軍製鋼技術物語に書かれるプロファイルを書くと以下になりますが、当初の焼戻し温度で熱処理を行ったところ白目と呼ばれる欠陥が現れました。
白目は海軍製鋼技術物語にも書かれているように上部ベイナイト組織です。410mm鋼板は86tもある大型鋼塊ですので、油焼入れでは冷却に2時間程度かかっていたようです。ベイナイトは正直良くわからないので触れられません(Wikipediaが謎のまとまりかたをしているのでぜひ)が、パーライトが生成する冷却速度以上、マルテンサイトの上部臨界冷却速度以下の冷却速度で生じる中間組織です。ベイナイトは生成する温度で上部ベイナイト、下部ベイナイトの2つに分類することが出来ます。低温で生成するベイナイトが下部ベイナイト、高温で生成するベイナイトが上部ベイナイトと呼ばれます(議論のあるところですが)。下部ベイナイトは微細なθとαからなる均質な組織が得られる一方で、上部ベイナイトはフェライト粒間にフィルム上の炭化物が生じ、粒が下部ベイナイトに比べて粗大になるなどの理由から、非常に脆性なことが知られています。複数の強化手法による脆化/強化のバランスを示した図を以下に示します。
下部ベイナイトの優れた特性と上部ベイナイトの見事な弱化因子としての役割が見て取れます。東北大学金属材料研究所研究所の所長でもあった村上武次郎は学振第14委員会にxC-5Ni-2Cr鋼の完全マルテンサイトとなる上部臨界冷却速度及びマルテンサイトが生じなくなる下部臨界冷却速度の炭素濃度依存性を報告しており、その図を以下に示しますが、0.4C-4Ni-2Cr鋼はかなりギリギリを攻めていることがわかります。
ただしこの臨界冷却速度はマルテンサイトと下部ベイナイトを混同している可能性があることに注意を払う必要があります。例えば、NIMSにて無償で公開されている溶接用CCTデータベースにあります0.3C-3.5Ni-1Cr鋼(UH-6)では50秒以内でベイナイトが生成しており以後はベイナイトとマルテンサイトの混合組織となっています。このことからフルマルテンサイト組織を得ることは2時間の冷却速度では困難であることが見て取れます。つまり、この鋼種で焼きが入ったと記述されている時、それはマルテンサイトあるいは下部ベイナイトからなる組織であることに注意をする必要があるでしょう。この観点は実際、Japanese heavy armorの白目の項で組織は上部ベイナイトと下部ベイナイトからなる組織と説明されていることをよく説明します。なお、下部ベイナイトは均質なα+θ組織を作るので、焼戻し組織は焼戻しマルテンサイト同様良好な機械的特性を示します。
当初の熱処理プロファイル
装甲に現れた白目の模式図。板中央部に白目が形成
白目は海軍製鋼技術物語にも書かれているように上部ベイナイト組織です。410mm鋼板は86tもある大型鋼塊ですので、油焼入れでは冷却に2時間程度かかっていたようです。ベイナイトは正直良くわからないので触れられません(Wikipediaが謎のまとまりかたをしているのでぜひ)が、パーライトが生成する冷却速度以上、マルテンサイトの上部臨界冷却速度以下の冷却速度で生じる中間組織です。ベイナイトは生成する温度で上部ベイナイト、下部ベイナイトの2つに分類することが出来ます。低温で生成するベイナイトが下部ベイナイト、高温で生成するベイナイトが上部ベイナイトと呼ばれます(議論のあるところですが)。下部ベイナイトは微細なθとαからなる均質な組織が得られる一方で、上部ベイナイトはフェライト粒間にフィルム上の炭化物が生じ、粒が下部ベイナイトに比べて粗大になるなどの理由から、非常に脆性なことが知られています。複数の強化手法による脆化/強化のバランスを示した図を以下に示します。
下部ベイナイトの優れた特性と上部ベイナイトの見事な弱化因子としての役割が見て取れます。東北大学金属材料研究所研究所の所長でもあった村上武次郎は学振第14委員会にxC-5Ni-2Cr鋼の完全マルテンサイトとなる上部臨界冷却速度及びマルテンサイトが生じなくなる下部臨界冷却速度の炭素濃度依存性を報告しており、その図を以下に示しますが、0.4C-4Ni-2Cr鋼はかなりギリギリを攻めていることがわかります。
上部ベイナイトを抑制するには上図からわかるように冷却速度を早くすることで抑制することができますが、海軍製鋼技術物語に書かれた上部ベイナイト抑制法は異なっています。呉海軍工廠製鋼部にて用いられた上部ベイナイト生成を抑制する焼入れ焼戻しのプロファイルを以下に示します。(Mo添加とかもγ/θで分配局所平衡とかになって上部ベイナイト抑制しそうなイメージが)
変更点は焼戻し温度が高くなり、690℃~700℃となったことで、その他に変更点はありません。
前説が長くなりましたが、今回の主題はなぜこれで上部ベイナイト組織が改善したのか?という点です。上部ベイナイトを焼き戻すと不均一な焼戻し組織ができるかなぁと思いますが、650℃で改善しないものが700℃に上げて改善する理由はあるかなぁ、というのが疑問です。アメリカ海軍がヒアリングを行った時の、VC鋼板の組成は以下の様なものだったようです。
さて、そんな疑問に応えるべく書かれたものとして続・海軍製鋼技術物語の元ネタとなったJapanese heavy armor(PDF)があります。Enclosure(C)のFig. 1で、NVNC鋼板のAc1点が調べられており、Ac1が705度、Ac3点が732度と得られています。個人的な感覚としてなんですが、このAc1点はかなり不思議です。種々の組成を持つ3.5NiCrMoV鋼のAc1点、Ac3点を以下の表に示します。
表の通りVC鋼板より低炭素、低Niな鋼板のAc1点は660度でして、VH鋼板のAc1点が700度というのは高すぎるように思います。このことを考える上でヒントになりそうなものとして、Japanese heavy armorあるいは続・海軍製鋼技術に書かれている「未溶解炭化物が多く見られた」という記述です。
変更点は焼戻し温度が高くなり、690℃~700℃となったことで、その他に変更点はありません。
前説が長くなりましたが、今回の主題はなぜこれで上部ベイナイト組織が改善したのか?という点です。上部ベイナイトを焼き戻すと不均一な焼戻し組織ができるかなぁと思いますが、650℃で改善しないものが700℃に上げて改善する理由はあるかなぁ、というのが疑問です。アメリカ海軍がヒアリングを行った時の、VC鋼板の組成は以下の様なものだったようです。
鉄と鋼,Vol. 76(1990),141-148pから抜粋
表の通りVC鋼板より低炭素、低Niな鋼板のAc1点は660度でして、VH鋼板のAc1点が700度というのは高すぎるように思います。このことを考える上でヒントになりそうなものとして、Japanese heavy armorあるいは続・海軍製鋼技術に書かれている「未溶解炭化物が多く見られた」という記述です。
球状化した未溶解炭化物は、本組成ですとθ相かM7C3相(M=Fe,Cr..)が考えられますが、現在ある資料のみではその同定は不可能なように思います。
いずれにしても、均一な焼戻し組織が得られる(焼入れ前に母相はγ相であった)一方で炭化物が残留していたということは、焼入れ前にはFe-C状態図上の(γ+θ)領域あるいは、より多元系では(γ+炭化物)領域にいたことを意味します。Hilertは計算によりFe-Cr-Cの870℃における等温断面図を得ていますが、Cr量の増加とともにγ単相領域は狭くなり、γ+θあるいは炭化物領域が低炭素側にシフトします。さて、γ+θ領域のγの組成は化学分析によって得られる組成ではなく、二相が平衡する組成ですので、γ形成元素である炭素の固溶量は当然γ単相領域より焼き入れた時に比べて減少します。すると、二相領域より焼き入れられた鋼のAc1点というのは化学分析組成よりも上がることが予想されます。そんなわけで、Ac1点は700℃より高くなったのでしょう。また、焼入れ性を改善するCrもFe3C中に分配されやすい元素です。
そうすると、焼き入れ温度を上げる事でより高い焼入れ性が得られたかもしれない…と考えることも出来ます。
さて、未溶解炭化物を含むVC鋼板はAc1点が700℃くらいということがわかりました。この鋼板を690℃~700℃で焼き戻していました。これによって白目(下部ベイナイト+上部ベイナイト混合組織)が概ね解決(解消)しました。
…まるで解決しない気がするのは自分だけでしょうか?
例えば、焼入れ温度が低く未溶解炭化物が多く存在し、下部臨界冷却速度あるいは上部臨界冷却速度が本来の組成より減少していたために、下部ベイナイト+上部ベイナイト組織となっており、これを解消するために焼入れ温度を高めた結果、一様な下部ベイナイト組織が得られ、それを焼き戻すことで良好な焼戻し組織が得られた、などでしたらわかります。しかし、下部ベイナイト+上部ベイナイトの混合組織を、上部ベイナイトを消失させるために焼戻し温度を少し上げたためにうまく行きました、と言うのは自分の中では直接つながりません。
そういうわけでNiCrMoV鋼の等焼戻し時間での、機械的特性の焼戻し温度依存性についての先行研究を見てみますと、確かに焼き戻し温度が上昇するに従って機械的特性が改善し、特に高温焼き戻しと呼ばれる領域ではよく改善します。
これは単に過時効と見ることも出来ますが、初期の熱処理材よりも硬度、降伏点強度共に減少するものの、結果としては、初期の焼戻し温度での靭性(むしろ延性脆性遷移温度?)が初期よりも改善し、測定された温度において十分な延性領域になったためにうまく行ったものと考えられます。改善プロセス後も時々白目が出ていたと考えると、結局この辺が妥当なのかな、と。
なんだか夢のない結論になってしまいました。
ただ、疑問と成るのが700℃という焼戻し温度です。なぜなら、焼戻し温度が700℃というのはかなりAc1点に近く、特に焼戻しのような長時間等温保持される時には平衡状態図での変態点であるAe1点(<Ac1点)に近づくことが予想されます。そういう点から見ると一部、焼戻し厨に逆変態をし、γとなっている可能性も考えられますが、Japanese hevy armorにあるように、焼き戻し組織は均一な球状化セメンタイト+αであり、これは焼戻しはα+炭化物領域内で行われたことを示しております。
以上まとめまたものを以下に示します。
そんなわけで、自分が白目について疑問になったことでした。ありがとうございました。
初めまして。私は素人なのでチンプンカンプンなのですが・・・。
返信削除「じゃあなんで白目(脆性破壊)を示す"はず”の板厚のVH甲鈑が白目を示さなかったのか、
これは端的に言って呉海軍工廠製鋼部が焼戻しの効果を増すために700℃という高温で焼戻しをしたためと結論付けられます 」
というこの言葉について少し解説して頂いても宜しいでしょうか?
鹿部さんが具体的にどのVHを指しているのか(おそらく26incの極厚サイズのことでしょうか?)存じ上げませんが、
私の記憶が正しければ26incVHからはベイナイトが検出されたはずですし、
「じゃあなんで白目(脆性破壊)を示す"はず”の板厚のVH甲鈑が白目を示さなかったのか」
という言葉の意味がよく分かりません。
私がどこかで勘違いしているだけでしょうが...。
コメントありがとうございます。コメントにまるで気がついておらず遅くなってすみません。
返信削除ここで想定しているVH甲板は410mm厚以上の全てを想定しています。堀川 によれば410mm厚の焼入れを模擬した焼入れ材はいずれも下部ベイナイト、上部ベイナイト、マルテンサイトの3つを含む組織を示しました。このプロセスは大和の製造を通して変化していないと認識しています。VH甲板開発初期に作られた410mmVH甲板は耐弾試験の際に白目と呼ばれる脆性破面を呈し割裂しました。白目という問題の本質は甲板に用いられる鋼材の焼入れ性不足または焼入れ設備の限界による焼入れ性不良であり、製鋼及び焼入れプロセスが変更されていなければ、解消されるものではありません。
一度用語を整理したいと思います。下部ベイナイト、上部ベイナイトという用語は日本刀を話す際によく出るマルテンサイトと同種の用語で、焼き入れ速度をマルテンサイトを得るよりも遅くすることで得られます。本文中にも書きましたように下部ベイナイトは優れた組織ですが、上部ベイナイトは鉄鋼材料を著しく脆化させます。
白目は破面の外見的特徴から名づけられたもので、上部ベイナイト等の組織と強く関係するものの、上部ベイナイトが出れば直ちに白目が現れるというものではありません。
ところで、鉄鋼材料ではいわゆる白目、脆性破面というのは室温で現れなくとも温度を低下させると現れるようになります。ここでは、白目が出るようになる温度を遷移温度と呼ぶことにします。遷移温度が室温よりも低い材料は砲弾の直撃を受けても白目が現れることはありません。上部ベイナイトが鋼鈑中に増えると、この遷移温度は上昇し、ついには室温以上になります。開発初期において白目が現れた410mmVH甲板とは上部ベイナイトが鋼鈑中に占める割合が従来の装甲板に比べて高く、遷移温度が室温以上になったものと考えられます。なお、この遷移温度は衝撃負荷速度によっても変化し、同じ温度でも工廠で領収試験に用いられたシャルピー衝撃試験と実際の砲弾とでは実際の砲弾のほうが遷移温度は高くなります。
さて、以上の観点から、今一度「白目が生じるはず」ということについて考えてみますと、白目が生じているならば上部ベイナイトが相当量含まれているはずであり、その原因は甲板の焼入れ性不足あるいは焼き入れ設備の性能不足にあるはずで、その後のプロセスがどうなっても本質的には解決しないはず、という意味です。
この記事はじゃあなんで解決したんだろう?という疑問に基いて議論していますが、C90にて出した大和の装甲でより詳細な議論を行っています。その結論としては、現実には白目は領収試験では影響がでない形にその後のプロセスで調整されてますが、これは結局のところ場当たり的にすぎないでしょう、という結論です。例えば、試験環境が低温、あるいは高衝撃荷重速度になれば、再び白目現れることが容易に想像できますし、戦後アメリカが26インチ厚に対して行った耐弾試験では破面は脆性破面を呈しています。これは結局そういうことだろう、と自分は思い込んでいます。
長くてすみません。適切な回答になっているでしょうか?
ああ、すみません。返信を下さった事を確認していなかった所為で、お礼の返事が遅れてしまいました….。申し訳ありませんでした。
返信削除適切な回答どころか、素人の自分でもVH製作の概略を理解する事が出来、本当に丁寧な解説がなされていると思います。
本当にどうも有難うございました。
重ねてお尋ねしたいのですが、宜しいでしょうか?
返信削除白目問題とはまた別の話ですが…。
私の知る限りではVHの小改良が行われた(シャルピー試験機の導入、焼き入れ温度の高温化)は、実際に生産が開始される前だったと記憶しております。
また堀川氏は、徹甲弾の工作の精度があまりにも悪い場合には、規格値の変更を行っていたと云う内情を吐露しています。
ただVHの場合、規格値の変更が為されていたという形跡や証言等が全く有りません。
という事はあの380mmのVHも660mmのVHも、同様の製法と規格の元で作られていたんじゃ無いかな、と思うんですよね。
鹿部さんはtwitterでのつぶやきで、
「微細な炭化物による析出強化能を犠牲にして靭性をかろうじて確保することができました。」
と仰っていますが、個人的にはその結果が380mmに現れているような気がするんですよね。
つまり、焼き入れ温度の高温化で微細な炭化物による析出強化能を犠牲にしていたとしても、
白目が発生しなかったVHの性能はトップクラスの耐弾性を持っていたと思うんです。
仮に白目対策の犠牲として表面硬度や硬化層の割合に影響を及ぼすとすれば、規格値の変更が検討されている筈なんです。
しかしVHの規格が変更されたという資料は聞いた事も見た事も有りませんし、やはり初期の小改良以降の製作や規格は同一の物だと思うんですよ。
とすると380mmも同じ製法で作られている筈ですから、高温焼き入れによって析出強化能を犠牲にしていると考えられますが、
硬度や硬化層の割合はほぼ規格値を満たしているんです。
長々と駄文を書き連ねましたが、やはり660mmの品質は白目対策に依る物では無くて、単なる工作ミスの範疇に収まる程度の代物だと思うんです。
堀川氏も「意外だ」と仰るのも合点が付くように思うんですよね。
これについて鹿部さんの感想を伺っても構いませんでしょうか?