侵徹体の運動エネルギーが標的の侵徹にすべて利用される低速度侵徹と異なり、高速度侵徹では侵徹体が消耗するために初期の運動エネルギー$KE0$は標的が受け止めるエネルギー$W$とは一致しません。
そこで、高速度側の極限では初期の運動エネルギーの何割くらいが侵徹に利用されているのかふと気になりました。
高速度侵徹の極限では侵徹深さ$P$は、侵徹体長さ$L$、侵徹体密度$\rho_p$、標的密度$\rho_t$を用いて
$$P = \sqrt{\frac{\rho_p}{\rho_t}}L $$
と表されます。一方、衝突時の侵徹体の運動エネルギー$KE$は、衝突速度$V_0$を用いて
$$KE = \frac 1 2 L\rho_p V_0^2$$
と表されます。標的の侵徹に使用されるエネルギーは、少し考えどころです。エネルギーは力×距離ですから、侵徹深さがわかってる現在、標的が作る力がわかれば直ちに求められます。標的が作る力はベルヌーイの式を参考にすれば、標的の侵徹に使用されるエネルギー$W$は
$$ W= \frac{1}{2}\rho_t u^2\times P = \frac{1}{2}\rho_t u^2\times \sqrt{\frac{\rho_p}{\rho_t}}L $$
として簡単に得られます。$W$と$KE$の比がエネルギー効率ですから、比を取って適当に解くと、エネルギー効率$\eta$は
$$ \eta = \frac{W}{KE} = \frac{\rho_{t} \sqrt{\frac{\rho_{p}}{\rho_{t}}}}{\rho_{p} \left(\sqrt{\frac{\rho_{t}}{\rho_{p}}} + 1\right)^{2}} $$
として簡単に得られます。まあ適当に、侵徹体としてタングステンの密度(19.3g/cm3)、
標的の密度として鉄の密度(7.8g/cm3)を代入してみれば、$\eta=0.24$程度となり、
高速度侵徹のエネルギー効率は24%程度になることがわかります。
以上、ふと思って計算してみましたが、たぶん昔の偉い人が似たような計算をしている気がします。
0 件のコメント:
コメントを投稿